協働ロボットの安全性の検証に使用します。製品開発時の試験やロボットの始業前点検など、現場での衝撃力の測定に適した測定器です。
概要
CBSF-XS はグリッパーの降り下ろしによる過渡的接触、グリッパーの挟み込みによる準静的接触の測定するための衝撃力測定器です。
協働ロボットとは、柵を必要とせず人と協働して作業をするロボットです。そのため、潜在的に人との接触による事故が発生するリスクを持ち合わせています。
2018年3月に中央労働災害防止協会が発行した「機能安全活用実践マニュアル産業用ロボットシステム編」では、協働ロボットの製造者、システムインテグレーターおよび使用者は、リスクアセスメントを実施し、衝撃力の最大値をISO/TS15066, TSB0033規格に適合させる努力義務があります。
CoboSafe CBSFシリーズは協働ロボットの安全性の検証に最適です。リスクアセスメントで必要とする身体部分に応じて型式を選択し、製品開発時の試験やロボットの始業前点検などで、衝撃力が測定できる測定器です。メーカーが発行する校正証明書により、性能が保証されています。また、収納ケースが付いているので保管や持ち運びに便利です。
ディスプレイを直接確認できない場合でも、本体の側面に組み込まれたLEDで動作モードを示すので状態を確認することができます。 数値がディスプレイに表示され、USBポートを介してオプションのソフトウェア「CoboSafe-Vision」でPCに取り込み、解析と報告書を作成することができます。 温度センサーと湿度センサーを内蔵しており、100回の測定データーを内部メモリーに格納することができます。
本体に格納された測定データーを取り出すには、ソフトウェアCoboSafe-Visionが必要です。
規格とガイドライン
ISO/TS15066 (TSB0033) 規格で定められた衝撃力の条件
- 過渡的接触(Transient)
人体部位がロボット可動部により衝突され、接触した身体を挟み込みや捕捉されることなく、ロボットが戻るまたは人体を引っ込められることができる状況。 - 準静的接触(Static)
人体部位がロボットシステムの可動部と他のワークセルの固定部、もしくは可動部との間に補足された状態で挟み込まれているまたは押しつぶされている状態。
衝撃力
衝撃力は力と圧力の数値を測定し評価します。
- 力(Force:表記 [ F ])
単位はニュートン [ N ] です。
質量 m [ kg ] の物体が衝突した時の加速度を a [ m / s ^ 2 ] とするとF = m x a [ N ]となります。 - 圧力(Pressure:表記 [ P ])
面積あたりにかかる力のことです。
面積が S [ cm2 ] の物体に F [ N ] の力が加わると、圧力 P ( N / cm2 ) はP = F / S [ N / cm2 ]となります。
K1圧力エレメントを使用した測定
ISO/TS15066では体の部位毎にK2スプリングのばね定数が定義されています。しかし測定器の表面は金属なので、実際の人体と違い衝撃力が大きく出る傾向があります。 このため、より実際の人体に近い条件で測定するためのガイドラインFB HM-080を、ドイツ法定労災保険組合が発行しています。
このガイドラインは、測定の際に衝撃吸収のためにK1圧力エレメントを使用することを指定しています。これは、体の部位ごとに硬さがゴムの硬度(Shore A)で規定されています。 CBSF-XSのK1圧力エレメントは、SH-70(赤)です。メーカーは、1年程度で新しいものを使用するよう推奨していますが、目視で著しい変形や劣化がある場合には、新しいものと交換してください。
リスクアセスメント
リスクアセスメントは、職場の潜在的な危険性または有害性を見つけ出し、これを除去、低減することです。 労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針では、「危険性又は有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置」の実施、 いわゆるリスクアセスメント等の実施が明記されていますが、 2006年(平成 18年) 4月 1日以降、 その実施が労働安全衛生法第 28条の 2により努力義務化されました。また、その具体的な進め方については、同条第2項に基づき、 「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」が公表されています。
従来の労働災害防止対策は、発生した労働災害の原因を調査し、類似災害の再発防止対策を確立し、各職場に徹底していくという手法が基本でした。 しかし、災害が発生していない職場であっても潜在的な危険性や有害性は存在しており、 これが放置されると、いつかは労働災害が発生する可能性がありました。 技術の進展等により、多種多様な機械設備や化学物質等が生産現場で用いられるようになり、その危険性や有害性が多様化してきました。 これからの安全衛生対策は、自主的に職場の潜在的な危険性や有害性を見つけ出し、 事前に的確な対策を講ずることが不可欠です。
ISO/TS15066 (TSB0033) 規格で定められた協働ロボットと人体の衝撃力の上限値
部位番号 | 過渡的接触と準静的接触の最大値(許容値)TSB0033附属書A | |||||||
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人体部位 | 正面/背面 | 準静的接触 | 過渡的接触 | ばね定数 [N/mm] |
||||
人体区域 | 特定局部 | 圧力 [N/cm2] |
力 [N] |
圧力 [N/cm2] |
力 [N] |
|||
1 | 頭部・額 | 額の中央部 | 正面 | 130 | 130 | 許容不可 | 150 | |
2 | 側頭部 | 正面 | 110 | |||||
3 | 顔 | 咀嚼筋 | 正面 | 110 | 65 | 75 | ||
4 | 首 | 頚椎 | 背面 | 140 | 150 | 280 | 300 | 50 |
5 | 第七頚椎 | 背面 | 210 | 420 | ||||
6 | 背中・肩 | 肩関節 | 正面 | 160 | 210 | 320 | 420 | 35 |
7 | 第五腰椎 | 背面 | 210 | 420 | ||||
8 | 胸 | 胸骨 | 正面 | 120 | 140 | 240 | 280 | 25 |
9 | 胸筋 | 正面 | 170 | 340 | ||||
10 | 腹 | 腹筋 | 正面 | 140 | 110 | 280 | 220 | 10 |
11 | 骨盤 | 骨盤骨 | 正面 | 210 | 110 | 420 | 220 | 25 |
12 | 上腕 肘関節 |
三角筋 | 背面 | 190 | 150 | 380 | 300 | 30 |
13 | 上腕骨 | 背面 | 220 | 440 | ||||
14 | 下腕 手首関節 |
橈骨 | 背面 | 190 | 160 | 380 | 320 | 40 |
15 | 前腕筋 | 背面 | 180 | 360 | ||||
16 | 上腕神経 | 正面 | 180 | 360 | ||||
17 | 手・指 | 利き手人差し指の腹 | 正面 | 300 | 140 | 600 | 280 | 75 |
18 | 利き手でない人差し指の腹 | 正面 | 270 | 540 | ||||
19 | 利き手の人差し指の末端関節 | 背面 | 280 | 560 | ||||
20 | 利き手でない人差し指の末端関節 | 背面 | 220 | 440 | ||||
21 | 拇指球 | 正面 | 200 | 400 | ||||
22 | 利き手の手のひら(掌) | 正面 | 260 | 520 | ||||
23 | 利き手でない手のひら(掌) | 正面 | 260 | 520 | ||||
24 | 利き手の手の甲 | 背面 | 200 | 400 | ||||
25 | 利き手でない手の甲 | 背面 | 190 | 380 | ||||
26 | 大腿・膝 | 大腿筋 | 正面 | 250 | 220 | 500 | 440 | 50 |
27 | 膝頭 | 正面 | 220 | 440 | ||||
28 | 下腿 | 脛(すね)の中心 | 正面 | 220 | 130 | 440 | 260 | 60 |
29 | 脹脛筋(ふくらはぎ) | 背面 | 210 | 420 |
仕様
項目 | 仕様 |
---|---|
測定範囲 | 20 ∼ 280 N |
バネ定数 | 75 N / mm |
衝撃センサー部の外形 | 370 cm2 |
測定精度 | ± 3% F.S. |
測定確度 | ± 1% F.S. |
サンプリング時間 | 1 ms |
内部メモリー容量 | 100 測定 |
消費電力 | 20 mA |
PC インターフェース | USB Type-C |
使用環境 | + 10 ℃ ∼ + 30 ℃・20 ∼ 90 %( 結露なきこと ) |
保管条件 | + 10 ℃ ∼ + 30 ℃・20 ∼ 90 %( 結露なきこと ) |
保護等級 | IP20 |
外形寸法 | 140L × 65W × 14 H / mm |
重量 | 350 g |